Story
振り返ると、心躍る瞬間は日常の一瞬に紛れていた。
その瞬間は、目的地ではなく道中で訪れる事が多かった。
僕は東京に住む知人から、地元の陶芸研究所を紹介された。初めての経験だった。
展示物などの下調べせず、陶芸研究所を訪れた。
常滑焼の歴史、技法が展示されており、かなり満足度の高い展示内容だった。
館内に入って間もなく、水差しが目に入った。
自分が普段好んで見ている陶器は、釉薬が使用されている事が多い。釉薬は装飾性もあるが、実用性の為に使用されている事が多く、その点にも魅力を感じている。逆に釉薬の使用されていない陶器に、魅力を感じる事は多く無い。
僕の見た水差しの胴体は歪で、釉薬は使用されていない。本来であれば興味を持つ事はないが、漆を施した蓋が乗ることで、一気に引き込まれた。マットな粘土、ツヤのある漆の相反する要素が混ざり、不思議と真新しく見えた。
物の魅力、時の流れ。